私が私の家を建てるには一体どのぐらいのお金が必要でしょうか?
家を建てるのにはどれぐらいの予算が必要なのでしょうか? 住宅ローンはいくらぐらい借りられるのでしょうか? そもそも大金を何十年も背負い込むなんて自らを債務奴隷にするようなものでは? 金額が大きいだけに家に関することは夢も大きければ恐怖も大きいです。ここでは、家の予算に関することを基礎から説明します。
そもそも家とはいくらぐらいするものなのか
家を建てると聞いて真っ先に思い浮かぶのが、そのお金でしょう。2018年5月に国土交通省住宅局から発表された「平成29年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅の平均購入資金は全国平均で4334万円、分譲住宅の平均購入資金は3840万円、分譲マンションの平均購入資金は4192万円でした。三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)ではこの金額は大きくなります。
この金額を聞いて怯まない人は少ないと思います。「たかが3〜4000万円なんて大した金ではない」と言えれば良いのですが、多くの方はそんな事は言えないと思いますし、これだけのお金を預貯金で持っているという人も少ないと思います。
そうなると家を建てるための資金は住宅ローンということになります。多額の借金を背負い、35年ものローンを抱えて残る人生を借金返済のために生きていく・・・というように想像してしまうととてもつらい気分になります。
しかし、家は大金持ちだけが購入しているものではありません。多くの普通の人が購入しているものです。ここでは、まず事実関係を冷静に見ていきましょう。
住宅ローンって何?
住宅ローンは長期間で低利の融資です。社会の安定のためには国民が資産を持っていたほうが良いという考え方から来ているものなので、借金といってもそれだけで悪徳といったようなタプの借金とは違います。それだけに、逆に言うと借りる人の人柄であったりとか、誠実さであったりとか、そういったことを見るわけではありません。しかしそれは審査が甘いとか誰でも貸してくれるというわけではなくて、制度として固まっているという意味です。
それがどういう意味なのかを具体的に見ていきましょう。
住宅ローンの借り入れ上限額は年収で決まります。
極めて大雑把に言うと、年収が400万円の人の場合、返済期間を35年、返済比率を35%として融資上限額は2634万円、1000万円の人の場合は返済期間と返済比率を同じく35年と35%として6587万円になります。
さてここで「返済比率」という専門用語が出てきました。この比率が肝なので、説明します。
返済比率とは、年収に対するローンの年間返済額の割合のことです。ここでいうローンとは全てのローンのことで、自動車のローンやスマホの割賦販売なども含みます。例えば、年収400万円の人が100万円返済する場合は25%になります。
銀行は住宅ローンの審査をするときに、車やスマホやクレジットカードなどで今抱えているローンの額を調べます。嘘をついても金融機関どうしで情報を融通しあっています。これを信用調査と言います。ですので、あなたがどれだけローンを抱えているかは金融機関には分かります。そして、自分の銀行がお金を貸したとして、合計の年間返済額がどうなるかを計算し、返済比率を見るわけです。この返済比率の上限が金融機関により25%とか30%というように決まっているわけです。(あくまで大筋の話であって、実際はもっと細かい審査のやりかたがありますが、ここでは端折っています。)
なぜ返済比率が大切なのか。それは「借金が返せなくなる」ということを恐れているからです。借金が返せなくなることは借りる方も怖いのですが、貸す方だって怖いです。毎月の給料が20万円でそこから毎月15万円返済していたら(返済比率75%)、とてもではないけれども生活が立ち行かないのは明らかです。しかし借金返済が2万円(返済比率10%)ならば、収入相応の生活をしているのならば返せないことはないだろうと考えます。
そしてここからが住宅ローンの肝なのですが、人間はどこかに住んでいるわけなので、持ち家でなければ家賃を払っているはずです。上の20万円の給料で2万円の借金返済をしている人の例でいうと、家賃に3万円払っているのならば、この家賃分を住宅ローンの返済分に置き換えたとして、月々5万円の返済。返済比率25%なので審査OKであるというように考えます。そして、3万円×12ヶ月×35年=1260万円。これに35年間の金利を考慮したものが住宅ローンの上限額ということになります。
(もちろん、持ち家だったら修繕費の積み立てがいるとか、金利の計算方法とか、月収と年収の差異とかいろいろありますが、ここではあくまで大まかな考え方を説明しています。)
住宅ローンの上限額をどう考えるか
住宅ローンにはその他にも年齢や貯金や職業や信用調査の結果など他にもいろいろな項目がありますが、専門的なことになりますのでここでは控えます。実際には金融機関などにご相談ください。
さてここで抑えるべきは、家を建てる際の予算というのはある程度テクニカルに上限額が出てくるということです。そして、その上でその上限額をどう考えるかです。
返済比率の上限というのは、各金融機関が「これを超えたら破綻する(借金を返せなくなる)」と経験上判断した指標であるといえます。あくまで平均ですので、これを超えたら必ず破綻するというわけではないですが、その危険性はどんどん高くなるというべきでしょう。住宅ローンで返済比率を一杯にしてしまうと、その先もう借金をする余地がなくなるということです。人生には何があるか分かりません。またあくまでこれは破綻しない(借金が返せる)ということであって、生活の豊かさや余裕を表現した数字ではないです。これに近づくほど、生活がきつくなるということは言えるでしょう。
すなわち、住宅ローンの上限額イコール家を建てる予算ではないのです。いくらを予算にすればよいのか? それは、返済比率を考えた上で、何を自分の人生で大切にするのかという価値観によって決まってきます。家で夢を叶えたくて返済比率ギリギリまで家に金をかけるというのならばそれもありですし、家よりも車のほうが大事だからカーローンに回せる返済比率枠を残しておきたいというのもありです。家とか車とかよりも、旅行とか学資とかにお金を使いたいというのもありだし、転職の可能性も自分の人生のカードとして考えておきたいという人もいれば、そこは考えなくてよいという人もいるでしょう。
家を建てる時の予算はいくらが妥当か
この記事の冒頭の問への回答は、前章で検討した、自分の人生で大切なものは何かという価値観によって決まってきます。年収(等)から予算上限額は出てきますが、それはそのまま妥当な予算ということにはなりません。そしてこれは、そのまま家の設計に直接的につながってきます。
家を検討する際には、予算上限から逆算して考えていかないと決まるものも決まりません。予算上限の設定なしに好きな土地に好きな家を好きな時間をかけて建ててよいのならば、それはおとぎ話の中のお城と大差はありません。現実的な制約の中でなにを大切にして何を捨てるかという判断が必要であり、その判断の根拠はあなたご自身とあなたのご家族の価値観そのものであるからです。そして、その価値観を住宅という形で具現化させたものが、家というものであると言えると思います。